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研究成果の概要
気管支喘息(以下、喘息)患者は、しばしば、胃もたれ、早期満腹感、心窩部痛といった消化器症状(ディスペプシア症状)を訴えます。しかし、喘息と機能性ディスペプシア(Functional dyspepsia: FD[用語解説参照])とを結びつけるメカニズムについては、よく分かっていませんでした。名古屋市立ハントカジノ ボーナスコードハントカジノ ボーナスコード院医学研究科の伊藤圭馬助教、金光禎寛講師、新実彰男教授(呼吸器・免疫アレルギー内科学)、植田高史准教授、鵜川眞也教授(機能組織学)、神谷武教授(次世代医療開発学)、久保田英嗣准教授(消化器・代謝内科学)らの研究グループは、FD合併喘息患者を対象とした臨床研究と喘息モデル動物を用いた解析を組み合わせて、FD合併喘息患者の特徴・咳感受性とFDとの関連を初めて明らかにし、インターロイキン-33(IL-33)が両疾患の相互作用に重要な因子である可能性を示しました。
図:本研究結果のまとめ
© 2024 Ito K et al. Originally published in the Journal of Allergy and Clinical Immunology
図:本研究結果のまとめ
© 2024 Ito K et al. Originally published in the Journal of Allergy and Clinical Immunology
研究のポイント
- 機能性ディスペプシアを合併した喘息患者は非合併患者と比べ、喘息コントロールが悪く、咳症状が重度で、カプサイシン咳感受性が亢進しており、喀痰中IL-33濃度が高値であった。
- IL-33は、好酸球性気道炎症モデルマウスにおいて、気道神経リモデリングおよび消化管運動機能不全の発症に関連しており、気道神経の活性化を抑制することで消化管運動機能不全が改善した。
- 機能性ディスペプシアはハントカジノ ボーナスコードと有意に関連し、IL-33がこの相互作用において重要な役割を果たしている。
背景
同研究グループの伊藤圭馬助教らは、過去の喘息患者データベースを用いた研究で、重症喘息患者の約30%にFDが合併しており、FD合併喘息では非合併喘息と比べ、吸入カプサイシンによる咳反応(以下、カプサイシン咳感受性)が亢進していることを明らかにしました(Allergol Int 2023)。カプサイシン咳感受性の亢進は、主に気道の知覚神経に発現するカプサイシン受容体transient receptor potential vanilloid type 1 (TRPV1) を介した神経機能不全を反映しています。つまり、この知見は、FDはハントカジノ ボーナスコードを示唆する併存疾患であり、両疾患が神経機能不全という共通病態を介して相互に関連している可能性を示唆しています。咳感受性の亢進は、喘息コントロールの悪化や増悪と関連し、気道炎症や気流制限とともに喘息の重要な病態生理であるため、喘息とFDとの相互メカニズムを明らかにすることは、ハントカジノ ボーナスコードの理解を深めるために重要です。
研究の成果
研究グループはまず、FD合併喘息(15名)と非合併喘息(35名)の間でカプサイシン咳感受性を含む臨床指標を比較しました。FD合併例は非合併例よりも喘息コントロールが悪く、咳が重度で、カプサイシン咳感受性が亢進していました。さらに、患者報告アウトカムを用いて評価したFD症状と咳症状、FD症状とカプサイシン咳感受性との間に有意な相関関係を認めました。
次に、喘息モデルマウスを用いて、好酸球性気道炎症下において消化管の運動機能に変化が起きるかを検証しました。パパインによって誘導した気道炎症モデルマウスでは、胃排泄能の遅延、小腸輸送能の低下を認めました。消化管(胃や十二指腸)には組織学的変化や炎症性変化は認められなかった一方で、気道においては、肺組織中IL-33遺伝子の発現上昇、気管支肺胞洗浄液中IL-33濃度の上昇、気道神経線維の増生(リモデリング)が生じていました。また、これら消化管、肺での変化は抗IL-33抗体の全身投与で改善し、ナトリウムチャネル阻害薬であるQX-314の経鼻投与でも改善しました。これらの結果から、気道炎症によって引き起こされる気道神経の構造的・機能的変化が、消化管運動機能不全と関連することが示唆され、IL-33が両病態の相互作用において重要な役割を果たしている可能性が示唆されました。
最後に、前述の喘息患者50名のうち、誘発喀痰を採取できた42名(FD合併患者12名、FD非合併患者30名)の誘発喀痰上清中IL-33濃度を測定したところ、カプサイシン咳感受性亢進例、FD合併例ではそれぞれ対照群と比べ、喀痰中IL-33濃度が有意に上昇していました。また、喀痰中IL-33濃度はカプサイシン咳感受性・FD症状との間に有意な相関関係を認めました。すなわち、喘息に併存するFDは気道神経機能不全を示唆する重要な肺外徴候であり、気道炎症におけるIL-33を介した経路(IL-33パスウェイ)が、神経機能不全の発症に重要な役割を果たしている可能性が示唆されました。
次に、喘息モデルマウスを用いて、好酸球性気道炎症下において消化管の運動機能に変化が起きるかを検証しました。パパインによって誘導した気道炎症モデルマウスでは、胃排泄能の遅延、小腸輸送能の低下を認めました。消化管(胃や十二指腸)には組織学的変化や炎症性変化は認められなかった一方で、気道においては、肺組織中IL-33遺伝子の発現上昇、気管支肺胞洗浄液中IL-33濃度の上昇、気道神経線維の増生(リモデリング)が生じていました。また、これら消化管、肺での変化は抗IL-33抗体の全身投与で改善し、ナトリウムチャネル阻害薬であるQX-314の経鼻投与でも改善しました。これらの結果から、気道炎症によって引き起こされる気道神経の構造的・機能的変化が、消化管運動機能不全と関連することが示唆され、IL-33が両病態の相互作用において重要な役割を果たしている可能性が示唆されました。
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研究の意義と今後の展開や社会的意義など
これまでの喘息研究は免疫系からのアプローチが主軸でしたが、近年、気道の神経機能不全が関わる喘息表現型(フェノタイプ)の存在が示唆され、免疫-神経クロストークの重要性が注目されています。喘息患者の咳症状や咳感受性は、喘息のコントロールや増悪に寄与するためその制御は喘息診療における大きな課題です。また、咳は医療機関を受診する最も頻度の高い症状であり、日常生活や社会経済活動に及ぼす負のインパクトは予想以上に大きいものです。喘息、胃食道逆流症に加え、FDも長引く咳の原因となりますが、日常診療で咳や咳感受性を評価する方法は十分に確立されておらず、ハントカジノ ボーナスコードに対する病態の理解や治療法も不明な点が多く残されています。
本研究は、臨床研究で示された喘息とFDの病態に共通する神経機能不全に着目し、基礎研究により両者の病態に関連する機序を明らかにしました。FDがハントカジノ ボーナスコードと有意に関連し、気道のIL-33がこの相互作用において重要な役割を果たしていることから、IL-33が介在する気道神経機能不全は、FDを併存する喘息患者におけるカプサイシン咳感受性の亢進と消化管運動機能不全の発症に寄与している可能性が考えられます。これらの知見は、喘息の管理において肺-消化管クロストークの重要性を認識し、IL-33パスウェイを治療標的として意識することが、この喘息患者フェノタイプにおける気道神経機能不全に対する有望な治療戦略となり得ることを示唆しています。
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【用語解説】
・喘息:気道の慢性炎症を本態とし、変動性を持った気道狭窄(喘鳴、呼吸困難)や咳などの臨床症状で特徴付けられる疾患。気道炎症により、気道上皮細胞の障害・剥離、平滑筋の収縮・増生肥大、気道分泌の亢進、さらに気道壁のリモデリングによって、気流制限や気道過敏性の亢進が生じる。
・機能性ディスペプシア:症状を説明し得る局所器質的、全身性、代謝性疾患がないにも関わらず、慢性的に食後膨満感、早期満腹感、心窩部痛、心窩部灼熱感などの症状が続く疾患。主に迷走神経系の機能異常が関与しており、胃排出能の異常、胃収容能の異常、内臓知覚過敏、胃・十二指腸の微小炎症など様々な病態が報告されている。
・カプサイシン咳感受性:咳感受性試験は咳嗽誘発物質の吸入により咳反射の過敏性を評価する検査として1980年代から研究目的で実施されている。当施設では、主に気道の知覚神経(C線維受容体)に作用するカプサイシンを用いて施行している。咳が一定の回数誘発される吸入カプサイシン濃度が低いほど、咳感受性が亢進していると解釈する。
・インターロイキン-33(IL-33):様々な細胞・組織において存在が確認されている炎症性サイトカインである。喘息病態においては、アレルゲン、カビ類、大気汚染物質、タバコ煙などの刺激で主に気道上皮細胞から放出され、気道炎症における免疫応答の強力な誘導因子となる。
・パパイン:主に食品業界で使用されているタンパク質分解酵素で、職業性喘息を引き起こすことが知られている。肺でIL-33の放出を促し、続いてリンパ球を活性化して好酸球性炎症を誘発する。マウス鼻腔内へのパパイン投与によって、自然免疫系喘息として典型的なモデルが誘導される。
・QX-314:正電荷を帯びたリドカイン誘導体であり、電位依存性ナトリウムチャネルNav1.8が発現している感覚侵害受容器ニューロンの興奮を抑制するナトリウムチャネル阻害薬である。
【研究助成】
日本学術振興会 科学研究費助成事業(24K11373)
公益財団法人 MSD生命科学財団(RA-020)
日本呼吸器学会 喘息研究支援プログラム(2023年度)
【論文タイトル】
Comorbid functional dyspepsia reflects IL-33-mediated airway neuronal dysfunction in asthma
(喘息に併存する機能性ディスペプシアはIL-33を介した気道神経機能不全を反映している)
【著者】
伊藤圭馬1、金光禎寛1*、植田高史2*、神谷武3、久保田英嗣4、森祐太1、福光研介1、田尻智子1、福田悟史1、上村剛大1、大久保仁嗣1、伊藤穣1、柴田泰宏2、熊本奈都子2、鵜川眞也2、新実彰男1
1名古屋市立ハントカジノ ボーナスコードハントカジノ ボーナスコード院医学研究科 呼吸器・免疫アレルギー内科学
2名古屋市立ハントカジノ ボーナスコードハントカジノ ボーナスコード院医学研究科 機能組織学
3名古屋市立ハントカジノ ボーナスコードハントカジノ ボーナスコード院医学研究科 次世代医療開発学
4名古屋市立ハントカジノ ボーナスコードハントカジノ ボーナスコード院医学研究科 消化器・代謝内科学
(*Corresponding author)
【掲載学術誌】
学術誌名:Journal of Allergy and Clinical Immunology
DOI番号:10.1016/j.jaci.2024.06.008